歯を支える土台を守り歯の寿命を延ばすために

「歯磨きの時に、歯茎から血が出ることがある」
「昔に比べて、歯が長くなったような気がする」
「朝起きた時、お口の中がネバネバする」

これらの症状は、多くの方が一度は経験したことがあるかもしれません。そして、つい「たいしたことはないだろう」と見過ごしてしまいがちです。
しかし、これらは歯周病が静かに進行していることを知らせる体からの重要なサインなのです。

歯周病は、痛みなどの自覚症状がほとんどないままに進行し気づいた時には歯を支える骨が大きく失われているということも少なくありません。
実に、日本人が歯を失う原因の第一位は虫歯ではなく、この歯周病なのです。

おひさま歯科クリニックの歯周病治療が目指すのは、単に歯茎の炎症を抑えることだけではありません。
歯周病の原因を根本から取り除き、失われつつある歯を支える大切な土台（歯周組織）を守り、そして可能であれば再生させること。
それによって、患者様がご自身の歯を一本でも多く一日でも長く保ち、生涯にわたって豊かな食生活を送れるよう全力でサポートすることです。

歯周病とは

歯周病について正しくご理解いただくことが、ご自身の歯を守るための第一歩です。歯周病は、決して「歯茎だけの病気」ではありません。

歯周病の正体

お口の中に残った歯垢は、唾液の成分と結びついてやがて硬い「歯石」になります。
歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなり歯周病菌の格好の棲家となって、病状を悪化させていきます。

「歯肉炎」と「歯周炎」の違い

歯周病は、その進行度によって大きく「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。

歯肉炎

歯周病の初期段階です。
炎症が歯肉（歯茎）だけに留まっており、歯を支える骨の破壊はまだ起きていません。
主な症状は、歯磨きの際の出血や歯肉の赤み・腫れです。
この段階であれば、歯科医院での専門的なクリーニングとご自身での丁寧な歯磨きを徹底することで、健康な状態に回復させることが可能です。

歯周炎

歯肉炎が進行し、炎症が歯を支える歯槽骨や歯根膜にまで及んだ状態です。
歯と歯肉の境目にある溝（歯周ポケット）が深くなり、歯を支える骨が溶け始めます。
一度溶けてしまった骨は、残念ながら自然に元の状態に戻ることはありません。
放置すれば、歯がグラグラと揺れ始め終的には歯が抜け落ちてしまいます。

全身の健康との深い関わり

近年の研究により、歯周病はお口の中だけの問題ではないことが分かってきています。
歯周病菌や、歯肉の炎症によって生じる毒性物質が歯肉の血管から血流に乗って全身を巡り、様々な病気のリスクを高めることが指摘されています。

例えば、以下のような全身疾患との関連が報告されています。

• 糖尿病
• 心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患
• 誤嚥性肺炎（ごえんせいはいえん）
• 低体重児出産・早産

お口の健康を保つことは、全身の健康を維持するためにも非常に重要なのです。

おひさま歯科クリニックの精密歯周病治療

歯周病治療の成功の鍵は「原因の徹底的な除去」と「再発させないための継続的な管理」にあります。
当院では、科学的根拠に基づいた丁寧で確実な治療を実践しています。

1. すべては正確な診査・診断から

効果的な治療を行うためには、まず現在の病状を正確に把握することが不可欠です。

歯周ポケット検査

レントゲン検査

口腔内カメラによる確認

2. 歯周病の基本となる治療（原因除去療法）

歯周病治療の基本は、原因である歯垢と歯石を徹底的に取り除くことです。

ブラッシング指導（TBI）

スケーリング

SRP（スケーリング・ルートプレーニング）

同時に、歯の根の表面を滑沢に仕上げることで歯垢が再び付着しにくい環境を整えます。
非常に精密さが求められる、歯周病治療の中核となる処置です。

3. 再評価

一連の歯周基本治療が終わった後、一定期間をおいて再度歯周ポケット検査などを行い、歯肉の状態がどれだけ改善したかを評価します。
この再評価の結果、状態が良好に安定していれば定期的なメンテナンスへと移行します。

進行した歯周病への外科的アプローチ

歯周基本治療を行っても、深い歯周ポケットが残ってしまい改善が見られない場合があります。
そのような場合には、より直接的に病気の原因を取り除くための外科的な処置が必要となります。
口腔外科出身である私の経験と技術が、特に活かされる分野でもあります。

歯周外科治療（フラップ手術）

マイクロスコープがもたらすより精密な外科治療

これにより、歯や歯肉へのダメージを限に抑えることができ、術後の痛みや腫れを軽減しより良好な治癒を促すことが可能になります。

失われた歯周組織を取り戻す「歯周組織再生療法」

歯周病によって一度溶けてしまった骨は、基本的には元に戻りません。しかし、近年の歯周病学の進歩により条件が整えば、失われた歯周組織（歯槽骨など）を再生させることが可能な場合があります。

それが、「歯周組織再生療法」と呼ばれる先進的な治療法です。
この治療の目的は、ただ骨の形を回復させるだけでなく歯を支える土台そのものを再建し、歯の寿命を延ばすことにあります。
当院では、科学的な根拠に基づいたいくつかの再生療法を行っています。

GTR法

骨を再生させたい部分に「メンブレン」という特殊な膜を設置する方法です。
この膜が、歯肉などの軟らかい組織が骨の再生スペースに入り込むのを防ぐ「壁」の役割を果たし骨の細胞だけが増えるための空間を確保します。

骨移植

骨が失われた部分に、患者様ご自身の骨（自家骨）や人工の骨補填材を移植する方法です。
移植した材料が、骨を作る細胞の「足場」となり骨の再生を促します。
これらの再生療法は、すべての方に行えるわけではなくお口の中の状態など、適応できる条件が限られます。
また、成功のためにはマイクロスコープを用いた極めて精密な手術手技と、治療後の徹底した衛生管理が不可欠となります。当院では、正確な診査・診断に基づき再生療法の可能性について丁寧にご説明します。

治療後の安定した状態を維持するために

歯周病は、高血圧や糖尿病と同じように「生活習慣病」の一つです。そのため、治療によって一時的に症状が改善しても日々のケアを怠ったり、生活習慣が乱れたりすると容易に再発してしまいます。

歯周病治療は、完了したら終わりではありません。治療によって得られた健康な状態を、いかに長く維持していくか。
そこからが、本当の意味での歯周病との付き合いの始まりです。

定期的なメンテナンスの重要性

当院では、治療を終えたすべての患者様に「サポーティブペリオドンタルセラピー（SPT）」、すなわち定期的なメンテナンスにお越しいただくことを強くお勧めしています。

メンテナンスでは、歯科衛生士による専門的なクリーニング（PMTC）でご自身では落としきれない歯垢やバイオフィルムを徹底的に除去します。
また、歯周ポケットの深さを測定し再発の兆候がないかをチェックしたり、噛み合わせのバランスを確認したり改めて歯磨きの方法を確認したりします。

患者様と、私たち歯科医院が信頼関係の下で協力し、二人三脚で再発防止に取り組むこと。それこそが、生涯にわたってご自身の歯を守り抜くための確実な道筋であると私たちは信じています。